アメリカのWEBマガジンに掲載して頂きました。

二人用のバスケット

アンドリュー・オドム

タイニーハウス・マガジンに掲載されたインタビュー記事より抜粋。

簡約Rumi Hashimoto

  

すぐ手の届く範囲に大切なものがすべて収まるサイズ、そしてどこにでも持っていけるという気軽さから、自ら設計製作をしたタイニーハウスに、「バスケット」という名前をつけたタイニーハウス・ジャパン代表の田上晴彦さんとスカイプを通じてお話しする機会があった。ホームページやソーシャル・メディアで、今数あるタイニーハウスの中で、田上さんのつくるバスケットは、最もつかみどころのない不思議なタイニーハウスとして注目の価値がある。

  日本人の設計者・製作者、田上晴彦さんのデザインしたバスケットは、おそらく過去2年間に市場に出回ったタイニーハウスの中で、最も美しく、コンパクトで独創的なタイニーハウスと断定していいだろう。

 地元九州産の杉の木でつくられた、2.7平方メートルの小さ家は、住む人と一緒に呼吸し生き続ける有機的で暖かい空間を作り出している。

 

  加工していない自然の素材を使うことで、家は呼吸をし、住む人に安らぎをもたらしている、と田上さんは話す。バスケットは、細部に至るまで、あらゆるところに彼のクリエイティブな才能を反映して設計されており、彼のタイニーハウスが生き物のように生き続けている要素があちこちに散りばめられている。「例えば木の色や手触りなどもとても大切な要素なんです。木目には木の歴史とその未来が共存して、私は自分が生活を共にする家が、自分の人生の一部として存在し生き続けて欲しいと思い、このバスケットを製作しました。」と田上さんは付け加えた。

 

 インスタグラムで多くの人たちを魅了し続けるタイニーハウス、大人二人が快適に住める空間には、プロパンガスの二口コンロ、たくさんの窓、窓枠にすっきりおさまるキャンバス地のロールアップカーテン、たくさんの収納スペース、ポップアップ・ルーフなどたくさんの楽しい趣向が凝らされている。しかし、田上さんのつくるタイニーハウスは、外見の巧みなデザイン以上のものを秘めている。

 

彼と話しをしていて、一番印象に残ったことは、彼がバスケットをただの建築物として、バラバラなパーツに分けて考えるのではなく、生き物のように全体の存在を大切に捉えていることだった。田上さんは、「もし私に好きな虫がいたとして、その虫のどこが好きかと聞かれても、その虫の足が好きとか、羽だとか、殻だとか、特定の部位を好きということには違和感を感じます。それはその虫が生きていく上で、その体のすべてが必要で大切なものだからです。特定の部位だけを特別扱いにするのは、したくないと思うのと同じです。」とさらに興味深い比喩を使って説明をしてくれた。

 

 田上さんのつくるタイニーハウス、バスケットにどうして魅かれるのかと考えた時、それはただ単にデザインが斬新だからとか綺麗だからという以上に、これまでにないハイブリッド的な可能性を感じさせてくれるからだと思った。バスケットはシャーシーの上にぴったりとフィットし、必要ならば車のジャッキーで上下させて取り外しも可能。車で牽引して好きなところに連れていくのもよし、シャーシーから切り離して、どこか落ち着く場所に据えつけるのもよし、バスケットは周りの環境に順応し、息をしながら、どこにいてもその存在感を感じさせてくれるのだ。


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