におう、あじわう、ふれる、きく、みる
この感覚は毎日私たちが感じている自分以外から受ける情報です。
今見ているパソコンや、携帯電話などもその情報のひとつです。
現代社会において、目から入ってくる情報の量はすさまじいものがあります。
大変便利で大切な情報を入手できる優れた道具ですが、この情報に偏り、生きるのは危険な気がします。
とくに子供たちにはいろいろな本物に直に触れ、五感を目いっぱい働かせ、体験を積み重ねてほしいと思います。
そのような環境を用意してあげるのは大人の仕事です。
子供のころ私の祖父の家の庭に石碑があり、
「 開け置きし玻璃戸直ちに蝶を見る 」
と記してありました。
祖父の師 詩人、山口誓子の俳句です。
祖父が亡くなり通夜のとき、この言葉の意味を叔父に聞くと、「開けておいたガラスの窓から直接、蝶を見ている」そんな言葉だろうということでした。
その句が強く心に残りました。
今でもよくその句の意図を考えます。
( 閉めていても外の様子が見えるガラス越しに見えるのは本物の蝶ではない、直に見るのが本物の蝶だ 真実を見なさい )と祖父が私たちに伝えたかったのでしょう。
先日アメリカのTEDという、スピーチで思いを伝えるインターネット番組で現代に行われている世界の奴隷労働をなくしていきたいという女性のプレゼンを見ました。
リサ・クリスティン:現代奴隷の目撃写真
この番組の中で、ヒマラヤの山から自分の体重よりも思い石の板を棒と縄で背負い何キロも運ばされている子供たちの映像があります。
多くの皆さんが目にしたことがある、ホームセンターの石売り場で並んでいるような板石の原石です。
私たち建築関係者なら必ず触れたことのある石材です。
ほかにも様々な製品があり、知らず知らず身につけたり、間接的に購入していたりしています。
身の回りにたくさんそんな手を経て使っているものがあります。
本当に心が痛みます。
大人が何をすべきか、何を用意しなくてはならないか、自分に何ができるか、何をしてしまったか、何をしているか。
いろいろなガラス窓が何重にも目の前にはあります。
よいものに触れる、悪いものには触れない、真実を知り、現実に本当によいものは何かをできる限り窓を開け、直に見ながら、手に取って考え、選択し、生きて行きたいと思います。
私たちの作るタイニーハウスも本当によい物であるよう真実に目をむけ制作に励みたいと思います。
来る年が皆様にとって本当によい年でありますように
タイニーハウスジャパン
田上晴彦